池田美奈子 氏 プロフィール
Edit-and-Design主宰。編集者、デザイン研究者。
ドイツ・フランクフルトのゲーテ大学で美術史を学んでいた時にバウハウスと出会いデザインの道へ。帰国後、東京藝術大学大学院を修了し、同大学助手を務めた後、日経BP 社に勤務し『日経デザイン』誌の編集者となる。独立して、IIDj 情報デザインアソシエイツ (Institute for Information Design Japan) を共同設立し、情報デザインを中心に活動を展開。
2003 年から2024 年まで九州大学大学院芸術工学研究院・准教授。デザイン史、デザイン理論、情報編集などの専門を背景とし、伝統工芸やビジョンデザイン、ジェンダー、コ・デザインなど、分野を横断したデザインプロジェクトに取り組んでいる。九州大学客員教授、日本デザイン学会理事。
「本を◯◯」と来たら、どんな言葉を続けますか。「本を読む」「本を買う」「本を探す」あたりが多いかもしれません。読者の立場です。あるいは「本を書く」という猛者もいるでしょう。もちろん著者です。そして「本を売る」のは書店です。それからあまり目立たない黒子が「本をつくる」編集者、エディトリアルデザイナーといった職能の人たちでしょうか。
編集は、著者と読者と書店をつなぐ仕事です。著者が持っているアイデアを、どうやって読者に届けるのか、書店に興味を持って、読者に届けてもらえるのかをああでもない、こうでもないと考え続けています。著者のアイデアを食材に例えるなら、素材の特徴や旨み、そして毒も見極めて料理します。毒も排除しないことが大事で、おいしさを引き立てるアクセントとして際立たせます。個人的なスタンスかもしれませんが、少し極端な言い方をすれば、編集者にはアイデンティティがありません。著者の考えを自分の思考回路に、読者の心の動きを自分の感性にインストールし、さらに一歩離れて社会における位置付けなども横目で見ながら食材に向き合います。まるでサイボーグのようですね。
先日、試しに編集前の原稿を「この原稿を読みやすいようにリフレーズしてください」とChatGPTに投げてみました。私が手作業でやったら1時間ぐらいかかりそうなところを、AIは2分ぐらいで整った原稿にしてくれました。文句なくわかりやすいし、文法的に正しいだけでなく、なかなかセンスのいい言葉をセレクトしています。正直「すごいな」と思いましたが、何だか記憶に残らない、すべすべとした文章です。面白い言葉を使っているのに、どこか既視感があって面白くないのです。このままでは読者に響かないと思い、私は、AIが整えてくれた原稿に「毒を盛る」作業に取り掛かりました。
紙の書籍、電子書籍、ウェブが比較される時代になって随分経ちますし、どれが良いとか良くないとかの議論もし尽くされてきたように思います。それぞれのメディアは、著者と読者をつなぎ、アイデアを伝えるという機能においては同じだと思いますが、メディアに接する人の意識や身体感覚は異なります。さらに、ウェブ上に散在する情報たちは、活きは良いのですが、断片化していて、ピチピチと泳ぎ回り、自由自在に結びつき刹那的で小さな文脈を大量生産しているように見えます。書籍は紙でも電子でも文脈とそれを支える構造を持っています。読者、その人にとって良い本はそれぞれだと思いますが、記憶に刻まれる大きな文脈をどう編むかは編集者の仕事です。今のところ膨大な手間ひまをかける価値はそこにあるのだと考えながら、頑張っています。
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