第1回:ウェルビーイングとは何か
●ウェルビーイングの広がり
ウェルビーイングの概念は、私たちの生活においてますます中心的な役割を担うようになってきました。2023年のヒット番付(SMBCコンサルティング発表)では、その重要性が高まりから、大関を獲得しています。これはただの一時的な流行ではなく、国の政策や教育の分野における基本的な考え方として確立しつつあります。
例えば、経済財政運営と改革の基本方針2022(骨太の方針2022)では、ウェルビーイングの推進が日本の政策の柱の一つとして掲げられました。岸田内閣総理大臣の所信表明演説でも、国民一人一人の幸福感の向上が重要な目標として語られています。そして、教育の現場に目を向ければ、次期教育振興基本計画においても、ウェルビーイングは重要なコンセプトとして取り入れられています。一人一人の多様な幸せを尊重し、それを社会全体の幸せへとつなげる考え方は、これからの教育の方向性を示唆しています。
このように、ウェルビーイングは個人の生活だけでなく、社会全体の基盤をなす概念へと進化しています。これは、経済成長や物質的な豊かさだけではなく、精神的な満足度や幸福感も重要であるという認識の表れです。ウェルビーイングを重視することで、持続可能な社会の構築に向けた新たな一歩を踏み出すことができるのです。
●ウェルビーイングとは
ウェルビーイングとは、単に病気がないという意味での健康だけではなく、心身の健康、心の充実、環境に対する満足感を総合的に捉えた幸福感です。私たちの幸せは、生物学的、心理学的、社会的な複数の要素によって構成されており、これらは相互に影響を及ぼし合いながら私たちの生活の質を形作ります。
ウェルビーイングという言葉は、1948年に世界保健機関(WHO)憲章前文で「健康」の定義として登場しました。 『健康とは、病気ではない、弱っていないということだけではなく、身体的(Physical)にも、精神的(Mental)にも、そして社会的(Social)にも、すべてが満たされた状態(ウェルビーイング)にあることをいいます。』
身体的(Physical)なウェルビーイングについては、運動と睡眠が大切です。中でも運動については、運動によって心臓の健康が促進され、血糖値が安定し、免疫機能が強化されるなど、様々な利点が報告されています。また、運動はストレスホルモンのレベルを下げ、幸福感を高めるエンドルフィンの分泌を促進します。これらの生理学的な変化は、私たちの身体的なウェルビーイングに直接的に貢献しますし、精神的なウェルビーイングにも繋がってきます。
先に述べた様にウェルビーイングは今や、私たちの生活における重要なキーワードです。それは健康、仕事、教育、さらには国家政策に至るまで、あらゆる場面でその価値が認識されています。この概念に対する関心の高まりとともに、世界中から新しい研究結果が日々発表され、ウェルビーイングに関する知見が深まり続けています。
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太田雄介氏
株式会社はぴテックCEO 兼 CHO(ハピネス)
慶應義塾大学 システムデザイン・マネジメント研究所 研究員
一般社団法人ウェルビーイングデザイン 理事
一般社団法人10分ランチフィットネス協会
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