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2019.06.10
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【コラム】第1回 運動を企業が取り入れることの意義 〜身体不活動の健康影響〜

 近年,国民の健康への関心が高まり,テレビでは健康に関する番組を見ない日はありません。

 運動することが身体に良いことは誰もが知るところであり,近年のマラソンブームも加わり,
最近では街中にランニングやウォーキングで汗を流している人の姿を多く見かけるようになりました。

しかし,厚生労働書の「平成29年国民健康・栄養調査」[1]の報告では,我が国で運動習慣のある
成人の割合は男性で35.9%,女性で28.6%と過去10年間でわずかに増加傾向を示していますが,
勤労世代である30歳代では男性14.7%,女性14.3%と未だに低いのが現状です。

厚生労働省の健康づくりに関する意識調査の結果(厚生労働省「健康日本21(一次)」,1996年)
では,運動を実施していない者の主な理由として,「時間がないから」「仕事や家事で疲れているから」
という理由をあげており,勤労世代とくに仕事で身体活動量が少なく,
座位時間の長い労働者では運動習慣の獲得,とりわけ運動時間の確保や運動施設の提供など,
運動環境の整備は喫緊の課題であると考えられます。

 そこで,本コラムでは「運動を企業が取り入れることの意義」として,
身体的不活動の健康影響(第1回),②職域における運動介入研究(第2回),
③アクティブレストのエビデンス(第3回)について概説します。

 身体不活動の健康影響について初めて報告されたのは,1953年のMorrisらの疫学研究です[2]。
Morrisらは,ロンドンの2階建てバスの運転手と車掌を対象に心疾患の発症とその死亡率について検証し,
労働環境として身体的に活動的な車掌に比べて不活動な運転手は心疾患の発症ならびにその死亡率が高い
ことを報告し,同じ環境下で働いていても身体活動量の違いによって心疾患の発症やその死亡率が異なる
ことを明らかにしました。

以後,今日にいたるまで運動習慣や身体活動量,体力と死亡率,様々な疾患の発症との関係が報告
されるようになりました。

我が国の東京ガススタディ[3]では,男性労働者を対象に16年間追跡調査を行い,有酸素性作業能力(持久力)
の指標である最大酸素摂取量とガンによる死亡率との関係について検討し,ベースライン時の最大酸素摂取量
が低くなるにしたがい,ガンによる死亡率が高くなることを明らかにしました。

さらに,関西ヘルスケア研究[4]では,通勤で職場まで片道10分未満しか歩いていない労働者に比べて,
20分以上歩いている労働者では2型糖尿病の新規発症が約17%抑制されることも示しています。

一方,最近では身体活動量だけではなく,不活動時間とくに労働者の座り過ぎも問題視されています。
我が国のJPHC研究[5]では,第1次産業に従事する労働者を対象に平均10年間追跡し,仕事中の座位時間が
3時間以上の労働者は1時間未満の労働者に比べて総死亡のリスクが高いことを報告しています。

また,九州大学の研究グループ[6]は,メタボリックシンドロームのない労働者を3年間追跡し,仕事中に
30分以上の連続した座位時間が長いものほど,メタボリックシンドロームの新規発症が高いことを明らかにし,
最近では立ったままでの会議やスタンディングデスクを導入している企業も増えつつあります。

このように,有酸素性作業能力や身体活動量の低下,長時間座位は死亡率や様々な疾患の発症と関連する
ことから,身体活動量が少なく,座位時間の長い労働者では,運動習慣の獲得および仕事中や余暇時の
身体活動量の増加を目指すとともに,座位時間を減少させることで,健康寿命ならびに労働寿命延伸に
貢献できると考えられます。

福岡大学スポーツ科学部

運動生理学研究室

准教授 道下竜馬

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